Sunday, May 22, 2011

エクリチュールとか航海とかなんとなくむず痒いけれども

オープンエンディッド・ライティング・プロセス


 さて、ここで考えてみたい人間にとっての書くという行為は未知の、今まで考えたことのもなかったような世界に到達するための活動である。こうした目的を持つ作文の技法はオープンエンディッド・ライティング・プロセスと呼ばれる。
この作業は未知の大陸への大航海(VOYAGE)に例えることができる。どこかに向かってまず旅立ち、陸地が見えたらそこへの上陸方法(LANDING)を考えるのだ。まず旅立ちから考えていこう。
 この段階の目的はできる限り最大のカオスを作りだし、どこに向かっているのかわからなくすることである。新しい資料に浸りきり(RESEARCH)、わき道にそれ、あちこちを覗き見し(FIRST TIME、対象との最初の出会いは大切である。自由に柔らかな精神で接触すべきだ)、混乱を作り出す。そしてただぶらぶらする。やがてなにか書く時期がくる(FREE WRITING)。とりあえず、二〇分から三〇分自由に書いてみる(IMMERSION)。そして読み返してみる。
自分の書いた文章の中に、なんらかの中心となるアイデアはあるか、今まで考えなかったことがあるか、そしてもし何か言いたいことがあるとしたら何かを文章の中から、つまり自分のエクリチュールの中から捜し出す(PERSPECTIVE)。そしてその考えについてまた文章を自由に書く。
 この作業は言葉の海へ出かけていく動きと、自分の動きになんらかの跡付けを試みる動きである。この作業を気長に繰り返していくと、何が書きたいのかのヴィジョンが見えてくる(VISION)。だが、ここで明確なアウトラインや展望を作る必要はない。(ROAD MAP、つまり、どの方向に向かおうとしてるかのデッサンでよい)。
ヴィジョンが見えた段階(LANDING)で第一草稿を書き始める(FIRST DRAFT)。書きながら(FOCUSED GESTATION)アウトライン(OUTLINE)を考えていく。出来上がった原稿をもう一度検討して(REVISION)、文体や文法、綴りを検討して(EDITTING)、清書をする(FINAL WRITING)。

以上がオープンエンディッド・ライティング・プロセスである。技法をエイジェントに分けると

VOYAGE
RESEARCH
FIRST TIME
FREE WRITING
IMMERSION
PERSPECTIVE
VISION
ROAD MAP
LANDING
FIRST DRAFT
FOCUSED GESTATION
OUTLINE
REVISION
EDITTING
FINAL WRITING

となる。



奥出直人「ライティング・エンジン」現代思想1989年3月号より

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