ねじを壁にねじこむのにスプーンを使うことは可能である。訓練によって、あなたはそれに熟練することもできるだろう。そして、また、スプーンを使った曲芸めいた芸当を習得することも可能である。さらに、スプーンの曲芸をしないひとたちを感動させたり、当惑させたりすることも可能である。そして、スプーンを「フォーク」と呼ぶことによって、すべてをより謎めいたものに仕立てることも可能であろう。で、このことに関する本を著し、フォークと呼ばれるスプーン曲芸をする他の人々を募って協会を設立することも可能である。そして、たとえその後であっても、そう、確かに、あなたはスプーンで壁にねじをねじこむことができるのである。
しかし、ねじ回しのほうがより良い。たとえ、いままでねじ回しを見たことがないとしても、それに似たようなものを発明することは可能であろう。ひとつの用途のスプーンが他の用途のスプーンとは同じでないにしても、おそらく似通ってくるのは確かである。それで、あなたは自分のスプーンをもつことができるようになるだろう。スープを飲むのに、曲芸をするために、そして、たまに、ねじを壁にねじ込むために。少なくとも、あなたがたよりよい道具をより上手に使いこなすまでは。
アルベルト・A・マルティネス『負の数学』青土社より
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