「それじゃどんな暮らしをなさってきたとおっしゃるの、もしも身の上話がないとすれば?」と彼女は笑いながらさえぎった。
「ぜんぜんそんなことなしにですよ!よくいわれるように、一人でひっそりと暮らしてきたんです、つまり、まったく一人ぼっちで–––一人、完全に一人きりで。わかりますか、一人きりというのがどんなことだか?」
「でも、どうして一人きりですの?するといままで誰にも会ったことがないとおっしゃるの?」
「いや、そうじゃありませんよ、会うことには会いましたがね、とにかくぼくは一人ぼっちなんです」
ドストエフスキー『白夜』(角川文庫、小沼文彦訳)
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